見ていますか

ジリジリと 鳴るテレビ
すっかり薄くなりました
騒いでいるのは
またあの　悲しいニュース

『我が国は、戦争を始めました』

現実味のない言葉
違和感が残る

ある日届いた　白い封筒
やたらと固い言葉
読み終わる頃には　目の前が真っ暗で
涙が流れてました

嫌です　嫌です
お国の為なんて　言わないで
今まで国がしてた事を知ってるの

嫌です　嫌です
私の為貴方の為　子供の為に行かないで


戦争は いつまで続く
やっぱり 帰らぬ貴方
もう少ししたら 帰って来るんでしょう
もうすぐ この子に会えますよ


ポツポツと 降る雨の中
軍服の男がやって来た
彼は一言 悲しそうにこう言った

『貴女の旦那様は特攻に行かれました』

わからぬ言葉の羅列
今度はもう 涙も出ません
貴方はきっと そこに居るでしょう
上からそっと見守るでしょう

それでも やっぱりね
隣に居てほしかった
貴方には父親になってほしかった
貴方の笑顔が見たい


貴方 貴方
見ていますか　貴方に似てますよ
きっと優しい子でしょう
貴方から一文字とって 光輝と言う名前をつけました

教えてあげましょう　あなたの父親はあなたにそっくりだったと


貴方のように立派で
貴方のように優しくて
貴方のようになってほしいと
私は願い続ける